あれこれ書評

【あれこれ書評】シリコンバレー式よい休息

よい休息、そのタイトルを読んだだけで、深く深呼吸をしたくなる。そして、確かに深く、深く呼吸をして、そのタイトルの意味を心身に記憶させたくなります。

「よい休息」は、人として生きていくうえで、自分をいつくしむ大切な時間である

「よい休息」との出会い

349ページ数もある。比較的分厚い本で、その内容は幾分重複しているところもありますが、飽きずに読み進めることが出来ました。それは、自分が、この中に書かれている『よい休息』を望み続けていたからかもしれません。

サブタイトルは、「最高のパフォーマンスを出すための」そして、「シリコンバレー式」。
そのサブタイトルを好きか嫌いかは、さまざまだとは思います。

わたしは、人から薦められて読んだことがきっかけなので、自分が本の題名やサブタイトルに意識を向けて選んでいないかったので、そこは、それぞれの方々のお好み次第です。本とのめぐり遇わせを大切にする方にとっては、題名やサブタイトルは大切なことかもしれません。

わたしにこの本を薦めた人は、とある会員制のスペースの図書コーナーでこの本とめぐり遇ったそうで、そのめぐり遇わせに、わたしは感謝しています。

わたし自身は、一生ものの本とのめぐり遇わせは、それぞれ、そのシーンを映像で記憶しています。

著者のアレックス・スジョン-キム・パン氏の紹介欄に、2016年、企業に「よい休息」をコンサルティングするレストフル・カンパニーを創業したと、あります。

よい休息のコンサルタント、勝手なわたしのイメージはお肌がつやつやとしたニコニコ笑顔の男性が浮かんできました。素晴らしい休息を提言している人をそのまま表しているということは、わたしには、そういうイメージなのか、と、ふと、自分で自分を笑ってしまいました。

著者の提案するよい休息とは

さて、そのよい休息のコンサルタントが提案する「よい休息」について。

二部構成になっている第一部は、「創造性を刺激する」というタイトルで、6つの項目について解説してあります。

4時間、朝の日課、歩く、昼寝、中断、睡眠、この6つ。

日頃から、この本の題名のようなことに関心がある人は、もうこのそれぞれの文字の羅列を見ただけで、おおよそ、なにをしたらいいのかは検討がつくのかもしれません。

この本では、それぞれの項目について、世界中の多方面で業績のある人たちが、その項目についてどのように暮らしの中に取り入れているのか、その詳細が記されています。

なるほど、なるほど、これだけの人たちがこのようにあえてこの項目を日々続けて、「よい休息」を重んじていたかということが、です。

4時間

まずは、『4時間』。あるSF作家は、朝の遅い時間に2時間、昼過ぎに2時間を執筆にあてるとあります、よい休息があることは、まる1日を仕事に費やすのではなく1日4時間から5時間に仕事を集約させることができるということです。

それぞれ、時間帯のパターンは違えども、おおよそ、4時間が創造性の高い仕事の時間である。

朝の日課

『朝の日課』。休息の価値を知る創造的な人々は、やりたいときにやる派ではなくて、なすべきことを日課にしているということがわかります。

本文中に紹介されている、チャイコフスキーは、「自尊心のある芸術家は、気分が乗らないからと言って、ぼんやり手を組んで過ごしたりはしない」と述べたとあります。

ほかにも、さまざまな例題が書かれていますが、やはり、1日の始まりにきちんとした日課を持つことは、よい仕事をする上では必須のことなのでしょう。

歩く

『歩く』。わたしにとって、この章の印象は、歩くということは、美しいことだと思いました。

もちろん、どこを歩くかによって、その人の見えてくる世界は違うとは思います。しかし、人は、立ち、そして歩き始めを祝うのですから、人が歩くということは、創造性の源であると同時に、つつましやかで、美しいものだと。

昼寝

『昼寝』。その寝ている時間について、長さはひとそれぞれにふさわしい時間があるのかもしれません。

本文にも、「座ったままの昼寝」という言葉も記されています。1日のうち、ほんの少しの休息が、それぞれの人たちの魂の安らぎとインスピレーションにつながる。

中断

『中断』。ここは、とても印象的な記述があります。

それは、ヘミングウェイの言葉、「最もよいのは、順調に進んでいる時、次にどうなるかがわかっている時にペンを置くことだ」。もうこれ以上に、いい休息のための「中断」を言い表している言葉はないかもしれないですね。

こうした休息の取り方が、何故いい休息に成り得るのか、それは本を読んでからのお楽しみ、そこにヘミングウェイらしさをとても感じて、説得力がありました。

最も、そこにいくまでに、ほかのいい休息の取り方も心得ておかなくては、ならないかもしれませんが。

睡眠

『睡眠』。本文の冒頭に、睡眠こそが、戦略的休息そのものである、とあります。

睡眠は身体と頭脳にとって決して休止していることではないということです。人は、よりよく生きるために、ゆたかなひと時である睡眠を大切にしなくてはならない、もちろん、人の睡眠を邪魔してはなりませんね。

創造性を維持する

二部構成の第二部は、「創造性を維持する」ことについて。

回復、運動、ディープ・プレイ(遊ぶ)、長期休暇と項目があります。

項目通り、創造性を維持するためには、日々のよい休息の継続だけでは、飽き足らない先見の人たちのさまざまな休日の過ごし方について記されています。

特に、印象的なのは、ハードな登山へと向かう有能な科学者たちのこと、7年に一度1年の長期休暇をとる、グラフィック・デザイナーのこと。

あなたもよい休息を

この本に紹介されている人たちは、それぞれが各界で特別な功績を残した、あるいは、現在も活躍中の有能な人たちです。

そう考えると、なんとなく遠い、自分とは関係のない人たちの良い生活だけが、書き連なっていると感じてしまうかもしれません。

日々、時間に追われたり、目の前のことに精一杯、しかし、それもわたしたちの大切な日常です。

「よい休息」など、縁遠い世界だと思っても仕方ないかもしれません、でも、その中に、時間に追われながらも、目の前のことに切羽詰まった状態であるとしても、それが一生続くのではないかもしれない、いえ、一生続くはずはないと、思ってみた時、あるいは、憧れるというだけの縁遠い世界が、実は日常のちょっとした時の過ごし方のコツを知ることから、意外な自分だけのゆたかな日常が取り戻せるのかもしれません。

そういう期待を思い出させてくれる一冊ではないかと思います。

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理里有楽
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